小さな恋のうた

久しぶりに父と母と兄と、家族四人揃って出掛けた。
田原町の駅で待ち合わせて、ぶらぶら散歩しながら、最近父と母が気に入っている豆屋に寄って、
それから、もう長いこと、通うというほど繁くはないけれど、お酒が飲める年になる前からお世話になっているお鮨屋さんへ向かう。

真横から西日が射していて、
父とゆっくり歩きながら話しながら歩く。
お父さん歳とったなぁと思いながら一緒に歩く。

店に入るといつもの大将と奥さんと、奥で息子さんが仕事していて、
やっぱり、おじさんもおばさんも歳とったな、でも元気だな、と思う。

翌日の朝。快晴。
気分よく早く起きて、散歩もして、洗濯も済んで、清々しいスタートだ。
流していた音楽がmongol800の「小さな恋のうた」になったとき、
ふと昨日の父の歩く姿を思い出した。
いつかはあの父とも別れなくちゃならないんだ、と急に思った。
あの博識も、皮肉も、センスの良さも、美味しい物好きでうるさいところも、
大事なことに限って言葉にしてくれないところも、
絶対、美味しかったごちそうさまって言ってくれないところも、
そう遠くはない将来なくなってしまうんだと。

そう思ったら何だか泣けて仕方がなくなって、
何度も「小さな恋のうた」を聴きながら、口ずさみながら、
爽やかな朝の景色のなかでボロボロ泣いていた。
まだいなくなってないのに。
こんなに明るい朝なのに。

ということで、孝行できないダメ娘は、
大威張りでこれからも美味しいご飯をごちそうになりにいくんだと、
今までよりもっと一緒にご飯をたべるんだと、
改めて決意した。

会いたい人にはすぐに会いにいかないとダメなんだよと、いつも教えてくれるこの曲は、今日は父への恋歌になってしまった。

 

 

2014.05